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【労働×求人NEWS Vol.42】求人募集にルールがある?!

職業安定法に定められている求人募集のルール
~労働者を募集する企業が求人の申込や労働者の募集にあたって留意する事項~
求職者が安心して求職活動を行うことができる環境を整備するため、職業安定法が改正されています。最近では、2017年、2020年、2022年と2~3年ごとに改正法が施行されています。さらに、2024年4月にも改正職業安定法施行規則が施行され、求職者への労働条件明示のルールなどが変わります。採用担当者は、改正内容を踏まえて求人活動をする必要があります。今月は、今まで改正された内容を整理して解説します。求人活動において法違反を犯さないように十分ご注意ください。

最低限明示しなければならない労働条件

労働者の募集や求人申込みの際に、少なくとも以下の事項を書面の交付によって明示しなければなりません。ただし、求職者等が希望する場合には、電子メール等によることも可能です。

記載が必要な項目 記載例
◎業務内容 一般事務
◎契約期間 期間の定めなし(期間の定めの有無、期間の定めがあるときはその期間を記載)
◎試用期間 試用期間あり(3ヶ月)
(試用期間の有無、試用期間があるときはその期間を記載) ★
◎就業場所 本社(●県●市●-●) 又は 支社(△県△市△-△)
◎就業時間 9:00~18:00
◎休憩時間 12:00~13:00
◎休日 土日、祝日
◎時間外労働 あり(月平均20時間)
◎賃金 月給 20万円(ただし、試用期間中は月給19万円)
時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度(いわゆる「固定残業代」)を採用する場合は、以下のような記載が必要です。
①基本給◇◇円(②の手当を除く額),②□□手当(時間外労働の有無に関わらず、〇時間分の時間外手当として△△円を支給),③○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
◎加入保険 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険
◎募集者の氏名又は名称 〇〇株式会社 ★
(〇派遣労働者として雇用する場合) 雇用形態:派遣労働者 ★
◎受動喫煙防止措置の状況 屋内原則禁煙(喫煙専用室設置) ■

★平成30年(2018年)1月1日より追加された事項  ■令和2年(2020年)4月1日より追加された事項

労働条件の明示にあたって遵守すべき事項

労働条件を明示するに当たっては、職業安定法に基づく指針等を遵守することが必要です。
【職業安定法に基づく指針等の主な内容】

  1. 〇明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容としないこと。
  2. 〇求職者に具体的に理解されるものとなるよう、労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮すること
  3.  〇本採用の前に試用期間として有期労働契約を締結しようとする場合は、本採用後の労働条件ではなく、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示すること。また、試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示すること。
  4. 〇明示する労働条件の内容が労働契約締結時の労働条件と異なることとなる可能性がある場合は、その旨を合わせて明示するとともに、労働条件がすでに明示した内容と異なることとなった場合には、当該明示を受けた求職者に速やかに知らせるよう配慮すること。

労働条件の明示が必要な時点(タイミング)

ハローワーク等へ求人申込みをする際や、ホームページ等で労働者の募集を行う場合は、労働契約締結までの間、下記のように、それぞれの時点で労働条件を明示することが必要です。

時点 必要な明示
ハローワークや職業紹介事業者への求人申込み、自社HPでの募集、募集広告の掲載等を行う際 求人票や募集要項等において、労働条件を明示することが必要です。但し、求人のスペースが足りない等、やむを得ない場合には、「詳細は面談の時にお伝えします」などと書いた上で、労働条件の一部を別途明示することも可能です。
※この場合原則として、初回の面接等「求職者や募集に応じて労働者になろうとする者(以下、「求職者等」)と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示すべきとされています。なお、裁量労働制と固定残業代との内容の明示については、「特に留意すること」と定められています。
労働条件に変更があった場合、その確定後、可能な限り速やかに 当初明示した労働条件が変更される場合は、変更内容について明示しなければなりません。面接等の過程で労働条件に変更があった場合にも、速やかに求職者に知らせるよう配慮が必要です。
労働条件締結時 労働基準法に基づき労働条件通知書または雇用契約書により労働条件を通知することが必要です。

労働条件の変更などの明示方法

(1)当初明示した労働条件を変更したり、特定したり、あるいは、削除や追加をする場合には、応募者に労働条件の変更内容を次の①~④の方法により明示しなければなりません。

「当初の明示」と異なる内容の労働条件を提示する場合(変更する場合)
(例)当初:基本給30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
「当初の明示」の範囲内で特定された労働条件を提示する場合(特定する場合)
(例)当初:基本給25万円~30万円/月 ⇒ 基本給28万円/月
「当初の明示」で明示していた労働条件を削除する場合
(例)当初:基本給25万円/月、営業手当3万円/月 ⇒ 基本給25万円/月
「当初の明示」で明示していなかった労働条件を新たに提示する場合(追加する場合)
(例)当初:基本給25万円/月 ⇒ 基本給25万円/月、営業手当3万円/月
(2)変更内容の明示は、求職者等が変更内容を適切に理解できるような方法で行う必要があります。以下の①の方法が望ましいが、②~④の方法などにより明示することも可能とされています。

当初の明示と変更された後の内容を比較対照できる書類を交付する方法
労働条件通知書において変更された事項にアンダーラインを引いて交付する方法
労働条件通知書において変更された事項に着色して交付する方法
労働条件通知書において変更された事項に注意書きをして交付する方法

(3)変更明示を行う場合でも、当初の明示を安易に変更してはなりません。学校卒業見込者等については、特に配慮が必要であることから、変更を行うことは不適切です。また、原則として、内定までに、学校卒業見込者等に対しては職業安定法に基づく労働条件明示を書面により行わなければなりません。
(4)変更明示が適切に行われていない場合や、当初の明示が不適切だった場合(虚偽の内容や、明示が不十分な場合)は、行政による指導監督(行政指導や改善命令、勧告、企業名公表)や罰則等の対象となる場合があります。
(5)変更明示が行われたとしても、当初の明示が不適切であった場合には、行政による指導や罰則等の対象となることには変わりありません。
◆変更明示に当たっては、その他にも以下のような点に留意が必要です。
【職業安定法に基づく指針等の内容】

  1. ☆労働者が変更内容を認識した上で、労働契約を締結するかどうか考える時間が確保されるよう、労働条件が確定した後、可能な限り速やかに変更明示をしなければなりません。
  2. ☆変更明示を受けた求職者等から、変更した理由について質問された場合には、適切に説明を行うことが必要です。
  3. ☆当初明示した労働条件の変更を行った場合には、継続して募集中の求人票や募集事項等についても修正が必要となる場合があるので、その内容を検証した上で、必要に応じ修正等を行うことが必要です。

2022年(令和4年)10月1日施行職業安定法改正のポイント

(1)求人等に関する情報の的確な表示が義務付けられます

各事業者に対して、求人等に関する①~⑤のすべての的確な表示が義務付けられます。
①求人情報,②求職者情報,③求人企業に関する情報,④自社に関する情報,⑤事業の実績に関する情報

◆求人企業の義務
虚偽の表示・誤解を生じさせる表示はしてはなりません。また、以下の措置を行うなど、求人情報を正確・最新の内容に保たなければなりません。 

    ●募集を終了・内容変更したら、速やかに求人情報の提供を終了・内容を変更する。
  1. ●求人メディア等の募集情報等提供事業者を活用している場合は、募集の終了や内容変更を反映するよう依頼する。
  2. ●いつの時点の求人情報かを明らかにする。
  3. ●求人メディア等の募集情報等提供事業者から、求人情報の訂正・変更をされた場合には、速やかに対応する。

(2)個人情報の取扱いに関するルールが新しくなります
 求職者の個人情報を収集する際には、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に、個人情報を収集・使用・保管する業務の目的を、Webサイトに掲載するなどして、明らかにしなくてはなりません。

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2024(令和6)年4月1日施行 職業安定法施行規則
求職者への労働条件明示のルールなどが変わります!

2024年4月から、求職者に対して明示しなければならない労働条件の追加や、手数料表などの情報提供の方法の見直しを内容とする、改正職業安定法施行規則が施行されます。
◆全ての労働者に対する明示事項
1.就業場所・業務の変更の範囲の明示 【労働基準法施行規則5条の改正】
すべての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。
※「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。
■明示事項の記載例

業務内容 (雇い入れ直後)法人営業(変更の範囲)製造業務を除く当社業務全般
(雇い入れ直後)経理(変更の範囲)法務の業務

class=”width75″(雇い入れ直後)大阪支社(変更の範囲)本社および全国の支社、営業所

就業場所
(雇い入れ直後)渋谷営業所(変更の範囲)都内23区内の営業所

◆有期契約労働者に対する明示事項等
2.更新上限の明示 【労働基準法施行規則5条の改正】
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。
<更新上限を新設・短縮する場合の説明> 【雇止め告示の改正】
下記の場合は、更新上限を新たに設ける、または短縮する理由を有期契約労働者にあらかじめ(更新
上限の新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になります。

  1. ⅰ)最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
  2. ⅱ)最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合

■有期契約を更新する場合の基準の記載例

3.無期転換申込機会の明示 【労働基準法施行規則5条の改正】
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示が必要になります。
4.無期転換後の労働条件の明示 【労働基準法施行規則5条の改正】
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
<均衡を考慮した事項の説明> 【雇止め告示の改正】
「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。

[2023年9月25日]